2013年10月5日土曜日

FJ 12 Q&A

4 北朝鮮への拉致とどう違うか?

安倍首相は2006年から翌年にかけての首相時代に、「官憲が家に押し入っていって人さらいのごとく連れていくという強制性はなかった」(2007.3.5参議院予算委員会)、「この狭義の強制性については事実を裏づけるものは出てきていなかったのではないか」(2006.10.6衆議院予算委員会)などと、「狭義の強制」がなかったと言い張ることによって日本軍「慰安婦」制度を弁護してきました。安倍首相の発言は何重にも問題を歪曲するものでしかありませんが、この理屈で言うと、北朝鮮による拉致はどのようになるでしょうか。



安倍首相の定義を北朝鮮の拉致問題にあてはめると、「官憲が家に押し入っていって人さらいのごとく連れて」行った例は確認されていませんので、拉致された人で強制された人はいなかったという結論になってしまいます。横田めぐみさんの場合も、「家に押し入って」連れ去られたわけではありません。



また日本軍の公文書で裏付けられていないという理屈を適用すると、北朝鮮の公文書で拉致を裏付けるものが出ていないのですから、それが明らかになるまでは拉致が事実かどうかは認定できないということにもなってしまいます。



北朝鮮によって拉致されたと日本政府によって認定された人のなかには、横田めぐみさんのように、直接の暴力によって力ずくで連行された人もいれば、神戸市の飲食店店員だった田中実さんのように、「甘言により海外へ連れ出された」(警察庁発表)ケースの人もいます。この田中実さんの件について、警察は、「複数の証人等から、同人が甘言に乗せられて北朝鮮へ送り込まれたことを強く示唆する供述証拠等」が入手できたとしてそれらを根拠に拉致されたと認定しています。



2-1-4a 史料 警察庁発表-1 2-1-4a 史料 警察庁発表-2





ここでは、北朝鮮の公文書によって裏付けられていませんし、供述証拠という証言によって拉致が認定されています。また力づくで連行されたとは認定されておらず、「甘言」、つまりうまい言葉で騙されたということですが、それでも拉致に変わりはありません。この警察の認定の仕方は当然のことです。



もし安倍首相が、拉致被害者の家族に対して、北朝鮮の公文書で裏付けられないので拉致されたとは認定できないとか、あなたの家族が北朝鮮にいるのは「狭義の強制」によるものではないと言ったとすれば、どうなるでしょうか。



これだけでも安倍首相の認識はとんでもないことがわかると思います。力ずくで連れて行っても、甘言で騙して連れて行っても、ともに拉致であり、犯罪です。安倍首相らの理屈は、単なるダブルスタンダード=二枚舌でしかないでしょう。